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2008.08.09 (Sat)

小説のつづきをまたどうぞっ!!!

焼けた町だというのに彼女は悲惨(ひさん)だとは思わなかった、
むしろ新しい命の芽吹きのようにすら感じていたのだ。


(誰が決めたか分からない名前がずっと嫌いだった。
今あたしは初めて誰かに必要とされた―新しい自分。これから新しく全てを創めて行く)
 

彼女は瞳を閉じた。
「あたしの名はルミ・・・・・・いえ、ユ・・・ユラ・フォールド。ユラと呼んで。」
閉じた瞳を開け目の前に居る人物をしっかりと見据えた。
「行意。ユラ様のお心のままに。」
方膝をつき胸に手を当て頭(こうべ)を垂(た)れる。そんな少年を立たせると彼女は恥ずかしそうにためらいながらも、言葉を絞り出すように紡いだ。


「シオンさん。あの、あたし着替えをしたいわ。
この格好だと怪我してる人みたいだもの。」
そう少女はおどけたように言う。
「お心のままに。」
シオンは微笑むと軽く会釈(えしゃく)をし、胸に手を当てた。
近くの屋根が壊れかけた家に入ると、
彼女は少年から手渡された服に腕を通した。


襟元にフリルをあしらった真っ白なブラウスに若草色のスカート。
艶やかな黒髪と瞳によく生え彼女によく似合っていた。
ふと、どこからともなく人の声が聞こえ、たくさんの靴音が近づいてくる。
ドアの前にいた少年はドアを叩くと中にいる少女に声をかけた。
「ユラ様、着替えのほうは大丈夫ですか?」
「ええ。もう着替え終わりました。」


そう少女が答えるやいなやドアが勢いよく開くと、
一瞬柔らかい表情をすると、すぐにその顔は真剣な顔に戻る。
その瞳はさっきまでの穏やかさはなく、鋭く何かを警戒しているみたいだった。
「シオンさん、どうかしたの?怖い顔してるわ。」
 獣が敵を警戒(けいかい)している、そんな表情が彼から見て取れる。
そんなシオンの顔つきにユラはその頬を両手で挟んだ、まるで子どもをあやすかのように。


「今すぐここを離れたいのですが・・・・構いませんか?」
ユラの手に自分の手を重ねていたのを、
グッと引き寄せその腕の中に包むように抱きしめる。
その間も靴の音は鳴り止むことなく、どんどん二人のほうへと近づいて来る。
「いいわ、でも何処に行くというの?」
シオンの腕の中に埋もれながら、ユラはシオンを不安そうに見上げた。
 

必要な物だけを人様の家だというのに拝借(はいしゃく)し、
すぐさま家を出ると、陽気で暖かかった日差しは機嫌を悪くしてしまったのか、
雲の間に隠れてしまい陰を落とす。


【More・・・】

「風のごとく我自由なり―時間の鎖(くさり)に縛られることなく、
唯一無二(ゆいいつむに)の主に巡(めぐ)り逢(あ)おう。
誰にも我を捕らえることは出来まい。
我シオン・クランシスはこれより、ユラ・フォールドに全てを捧げん。
忠誠を誓い全てをかけてここに契約す。」


空を仰ぎ見ながら、
誰というわけでもなく全てに誓いを立てているようだった―
真っ直ぐなその瞳には強い意志が見える。全てを見通すような瞳、
そして堂々としたいでたち。  
彼の周りにはいつも風が吹いていた。
時には優しく、時には激しく、
目には見えないがいつも傍にあるような、まるで風をまとっているかのような


―そんな気さえした。


「誰にもオレとユラ様の邪魔はさせない。
オレの全てを支配していいのは、ユラ様ただ一人だけだ。そう、ユラ様だけ・・・・・」
一人呟きながら、
腕の中にあるぬくもりを確かめるようにシオンはきつく抱きしめた。
「シオンさん???」


「人が二人もこんなとこに隠れていやがった。しかも金の首飾りを
しているガキがいやがる!」


振り向くと広場の入り口に五人の男たちがにやけた顔で立っていた。
男たちは品定めするかのように下から上へと舐めるように二人を見ている。
そんな男たちの視線にユラは少したじろぐと、
シオンはすかさず隠すように後ろへと押しやりすごい形相で男たちをにらみつけた。
「オゥ、怖い。そんな睨(にら)むなよ、俺たちまるで悪者みたいじゃん。」
一人の男のそんな言葉にツワモノタチの間で笑いがおきた。


「バ~カ、俺たちはどう見ても悪者じゃねぇか。
欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる、それが俺たち―
だから兄ちゃん、その首飾りと小娘をこっちに渡してもらおう。」


長い刃物をチラつかせながら、
瞳に怪しげな光りを宿した男たちは五人でユラとシオンを囲むように
じりじりと近づいてきた。
ゆっくりと獲物を追い詰める獣のように・・・・・・・
ユラは恐ろしかった。
男たちはガタイがよく、普通の大人の男たちよりひと回りもふた回りも大きく見えた。
そんな五人に囲まれでもしたら一般人は怖がって当然だ。


「まぁ、あんたでも売れそうだけどな。
女だったらよかったのに・・・・・俺たちツワモノの掟は男は殺すことになってる。
悪く思うなよ、呪うなら自分が男に生まれてきたこと怨みな。」
シオンはそう言った男に闘争心むき出しのまま眼(がん)つけている。


(怖くないのかしら?子どもでも容赦なんてしない、連中相手に。)


「大丈夫ですよ。」
「えっ!?」
もう一度聞き返そうとした瞬間、
一人の男が奇声を上げながらシオンに刃物を振り落とした。
そう、振り落としたはずだった・・・。
 

 ―ヴゥワッー


そこにいた者全てが自分の目を疑った。
振り下ろされたはずの刃物(やいば)は、
弾かれて踊るように宙に舞いながらカランと地面に落ちたのだ。
「???」
ツワモノタチは互いに顔を見合わせて、
今、目の前で起こった出来事を飲み込もうとしていた。


(確かに俺はこのガキを殺そうと刃物を振り落としたはずなのに・・・・・
なぜ傷ひとつ負ってないんだ!)


(あの野郎、手を使わずに刃物を弾くなんて。
そんなの聞いたことも見たこともねぇぞ。あ~きっと偶然だ、偶然。
それか俺らの見間違いだな。)


男たちは体中に冷や汗をかき、少し後ずさりながら二人から離れた。
そしてもう一人、シオンの後ろで状況を把握できずにいた。
何が起こったのか分からないが、
ユラはとりあえずシオンの隣に並ぼうとした―、長い黒髪が風に舞った。
「風!?」
そして、ユラがそうつぶやくと、さらに強くユラの美しい髪を揺らす。


隣を見るとシオンは口元に少しだけ笑みを浮かべ、
手のひらを垂直に上げる。
目を向けると、そこに風が砂を巻き上げながら集まっているではないか!
その小さな空間の中に風が集まり渦を巻く。
そして、砂以外にも花びらや木の葉を巻き込み蠢(うごめ)いていた。


「さっきのタネ明かしです。どうやら、誰も分からないようなので。」
にっこりと微笑むと、蝋燭を吹き消すように手のひらに息を吹きかける。
すると、驚いたことに手のひらに蠢いていた渦は簡単に消えてなくなっていた。


「ヒィッ!化け物だ。」
「たのむ。命だけは助けてくれぇ。」
その様子を見ていたツワモノタチは腰を抜かして逃げることも出来ずに命乞いをし始めた。


「オレは無抵抗な奴に手を上げるほど残忍じゃないし、お前らの命なんて
いらねぇよ・・・・・ただし、ユラ様を傷つけるっていうなら話は別だがな。」


自分に刃物を振り落とそうとしていた男に、
ヒタヒタと小さな携帯用のナイフを頬にあてがいながら、シオンは猫なで声で言った。
「しねぇ、そいつには指一本だって触ったりしねぇから、殺さないでくれ~。」


大の大人の男が、
少年に対して泣き笑いのまま、
崇め奉らんとでもいうように土下座をしている姿はなんとも滑稽(こっけい)だった。
「シオンさん、そんな人たち放っておきましょう。」
その間、ずっと見ているだけだったユラはそう言うと、
ツワモノタチから顔を背けた。


「まったくもってお優しいお嬢様で!おありがとうございます。
慈悲(じひ)深き、お嬢様・・・我ら一同そのお言葉を頂戴いたしまして
恐悦(きょうえつ)至極(しごく)にございます。」


ワザとらしい言葉を並べ立てた後に、
《ハハア》と高貴な者にするようにツワモノタチは深々と
シオンの時と同じように土下座した。
「よかったなぁ、ユラ様が本当にお優しい方で。
お前ら命拾いしたぜ。」


男たちに背を向けたシオンは、
ひらひらと手を振ると、歩き出したユラの後について行く。
一気に緊張の糸が切れたように安堵の息をもらし、
化け物相手に殺されずにいられたことをツワモノタチは素直に喜び合う。
これは俺たちのちょっとした武勇伝になるぜっと、口々に言いながら―


「おい!」
急に少年が何かを思い出したかのように振り向き、
ツワモノタチの話に割って入ると男たちは素(す)っ頓狂(とんきょう)な声で返事をし、
背筋を伸ばした。


「お前ら確か、この首飾り欲しいとか言ってなかったか?」
「いえ、そんなお気遣いなく!慈悲深きお心でお命を助けて頂いた方に、
そんな滅相もありません!」


上ずった声でそう答えると、目を白黒させている。
「あ~、別にこんなのいらないし、お前らにやるよ。」
手で外そうとしたが外れなかったのか、
シオンは急に面倒くさそうな顔をすると少しの間小さく何かを唱えていた。
そして高い金属音が鳴り、外れたのを勢いよくツワモノタチめがけて放ると、
弧を描いてツワモノの一人の手中に納まった。


(本当はツワモノタチなんて許せないけど・・・・
命乞いをしている人を殺したらあいつらと同じになってしまう。
そんなの嫌だから・・・・・・・)


足早に歩いていたユラは唇をきつく噛みしめながら立ち止まると、
一度だけ五人の男たちを目に焼き付け、そしてまた歩き始めた。
「シオンさん!」
「はい。すぐ参りますユラ様。」
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テーマ : ブログ日記 - ジャンル : ブログ

22:39  |  小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

>怠け者のの一人言さんへ

同一人物です(笑)
人間いろんな面を持ってるものじゃないかな~
なんて最近思うひよこ(つω`*)テヘ

いろんな面てんこもりのほうが
人柄としても深みがあるのかもです~♪
緋夜璃 |  2008.09.05(金) 23:06 | URL |  【コメント編集】

「神は偉大にして無情なり、信仰心は人のクサビにして自制心と・・・何て文面が出てきたらと思う。。」 でも小説は書くし、歌も作詞出来るから別人? 絵文字も出てくるし凄いな。。 RPGの世界に落ちると、どうなるのかな? 又、見に来ようです。
怠け者の一人言 |  2008.08.11(月) 23:06 | URL |  【コメント編集】

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